【医療衛生情報】うつ病、どこまでご存知ですか?

【医療衛生情報】うつ病、どこまでご存知ですか?

 7月13日から1週間に渡り、うつ病の診療についての啓蒙活動が北京大学第六医院で行われた。セミナー会場は満席となり、問い合わせが絶えない状況であった。
 精神科の専門家は、中国はまだうつ病に対して正しい理解がされておらず、総合病院ですらその診断は難しいというのが現状だ。うつ病に対する正しい認識と受診率を上げることが直面している大きな課題であると警鐘をならしている。
 
殆どの患者は体の疾病だと思い込んでいる

「うつ病患者の多くは不眠や息苦しいなどの症状を訴えて病院に来る。気分が優れないという理由で来る患者さんはあまりいない。」
こう話すのは今回のセミナー会場となった北京大学第六医院の精神科副主任・劉医師である。精神科に受診に来るうつ病の患者数は、その潜在的患者数に対し、氷山の一角に過ぎないのである。

劉氏は続けた。
「世界的な流行している疾患の調査結果では、一般人の重度うつ病発症率は3-10%、身体疾患を抱えている人の発症率は20-60%に跳ね上がる。中国国内の研究により、中国における重度うつ病の発症率は2.3%、地域別では都市より田舎の方がやや高く、性別では女性の方が男性より発症率が明らかに高いのが特長である。」

同じ北京大学第六医院の教授・于氏はこう語る。「うつ病患者の中で助けを求める人は僅か10%で、そのうち精神科を受診する人は2-3%しかいない。その他は、身体の疾患だと思い込んでいる人が多数であるのが現状だ。そういう人たちは、家族に病院に連れてこられても、自分がうつ病であることを受入れられない人たちがほとんどである。」

「憂うつな気分」はうつ病の症状の一つに過ぎず、長時間落ち込んでいる状態(医学的には2週間が目安)により、仕事、生活、勉強に影響を及ばすことになれば、うつ病と判断してもよいだろう。前述の劉氏によれば、「興味がわかない」、「ストレスがたまる」、「不安、無力感」、「原因不明の不眠」、「疲れやすい」、「食欲の低下」、「便秘」、「イライラする」「息が苦しい」などの症状を感じたら、うつ病の可能性が考えられる、と。

うつ病の発症は性格と関係ない

  大学生、芸能人、役人などの自殺の報道がある度に、これらの人達はうつ病になりやすい環境にいるのだと、周囲から思われがちである。また、日々時間に追われた生活を送っている事や、仕事のストレスが溜まりやすいホワイトカラーの人たちが、うつ病になりやすいと誤解されている。
  しかしながら、実は流行病学の調査結果により、教育程度の低い人、経済格差により底辺に属さざるを得なくなった人、重い身体疾患を患っている人等がうつ病になりやすい、ということが分かってきたのである。このような社会的弱者、孤立(社会的支援の欠如)をした階層の人たちに、憂うつな気分がある程度たまると重症になりやすく、自殺するまでに至ってしまう傾向がある。一方、大学生はその置かれた環境から自殺行為には走りにくいと考えられ、それよりも田舎に住む女性こそ危ないと言える。

薬物に対する抵抗感
 うつ病治療に対する誤解が存在し、主に治療薬を長期に渡り服用することに抵抗を示す人たちがいる。于氏はこう述べた。「抗うつ薬では麻痺にはならない。稀に脳機能衰弱になるうつ病患者がいるが、それは抗うつ薬の副作用ではなく、大脳疾患による脳機能障害によるものである。うつ病は、早期に受診し医師の適切な治療を受ければ、十分治癒できる病気だ。軽いうつ病には服薬は必要ないが、中症、重症患者には薬物治療が必要。初診の患者は6-9ヶ月続けて内服することが必要だが、実際平均服用期間は3ヶ月で止めてしまうケースが多く、これは再発のリスクを高め、今後一生薬を服用することになるかもしれない。」

うつ病に気付かない医師もまた多い

 内科患者の1/5がうつ病の合併症が発生すると考えられている。疲れを感じたり、気力がわかないと訴える患者さんの半分がうつ病の可能性がある。消化器内科に受診する患者は実は消化器に問題はないが、医師がうつ病と気付かないため、患者は病院をたらい回しにされ、一番最後に精神科の受診を勧められることになるのである。こういった受診の過程が医療資源の無駄にもなり、患者の苦痛や経済的負担が増える結果となってしまう。こうした問題を解決する為には、総合病院での精神疾病に関する知識の普及が重要課題である。

うつ病の予防は個人のことだけじゃない

 現在は、企業の社員管理の一環として、食事の時間にメンタルヘルスに関するビデオを流し自己啓発の助けとしたり、ストレスを緩和するため社内サークルを設立したり、労働組合主催のメンタルヘルスに関する研修と指導を奨励している。
于氏は語る。「軽度のうつ病はエクササイズやレクリエーション、友人との語らいなどでその症状を緩和することが出来る。しかし、重症患者には受診と治療が必要である。」と。低収入の人たちは社会からの支援を得られず、発症から重症にいたるまで気づかれることなく、最終的には自殺という悪い結果となってしまう。
于氏は続ける。「うつ病に対する認識と受診率を上げることが我が国公共衛生領域がまさに直面している重大課題である。うつ病の予防は個人レベルではなく、企業、労働組合、政府の皆が責任を負い、積極的に解決すべきだ。」と。

原文:健康報ネット 2014年7月15日掲載記事より

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